2004年11月24日

図書館総合展

図書館総合展に行く。出展自体は、ブックフェアから図書館関連企業だけが集まったようなものだから、それほど目新しいものはない。そのなかでは、パナソニックとか今まで図書館と関係なかった企業が、出展してきているのは気になった。確かに、IT化がテーマの図書館業界を考えると、システム開発などに自信のある新規参入企業が出てきてもおかしくない状況にはある。
出展社のプレゼンを2つ見る。

1つは埼玉福祉会による赤木かん子氏のイラストシールについての講演。
イラストシールについては、批判的な意見もあるわけだが、当の本人の話を少しでも聞かないと、批判に同調するのも片手落ちの感があるので、聞いてみた。
話を聞いた感想としては、イラストシールを発案するにいたった根本の考え=コンセプトは納得できる。ただ手段であるはずのイラストシールが最終目的に変わってしまっているように感じた。結果として、氏のイラストシールは、好き嫌い、賛否が大きく分かれるものになったように思う。

もう1つは紀伊国屋書店による「OCLCからのレポート~混沌と秩序の共存~」
途中から聞いたのだが、「最初から聞けばよかった」と思うような、なかなか内容のあるプレゼンだった。紀伊国屋書店のプレゼンというよりは、現在の図書館が進むべき道について述べられていて、企業別プレゼンでやるにはもったいないように思った。

もう少し詳細。まあ、取材メモみたいなものですな。

イラストシールについて
出発点の「児童が自力で探せるようにする」というコンセプトはもっともではある。そこで、
・低学年には、3桁の十進分類は理解できない。
・全校生徒に理解できるような配架を目指す。
・色別にする例もあるが、色は分類の内容と直結しない。
・イメージと結び付けられるということで、イラストシールを貼る。
という考えにいたったのは、理解できる。
ところが、続いて「生徒は1ヶ月で130のシールをすべて覚えた」と話が来たあたりから、少しづつ違和感を覚えた。まず、そこまでたくさん作ったら、最初のコンセプトからかけ離れていっているように思えた。
さらに話を聞いていると、どうも手段であるはずのイラストシールが最大の目的になっているように、感じられた。「イラストシールの量で蔵書のバランスが分かる」まだここまではいい、「書架の中で昆虫の中でカブトムシが厚さが薄ければ、そこを買い足せばいいと分かる」ここまでくると、イラストシールのコンプリート作業の世界に入ってしまっているのではないだろうか。
そもそも、130のイラストシールの内訳を見れば、赤木氏の考える児童生徒の需要に即した分類であり、非常に偏りがある。社会科学系が、政治・法律・経済というように、シンプルで分かりやすいのに比べ、「動物・昆虫」「小説のジャンル」はかなり細かい。いくら子供が興味を持つことが多いからといって、とんぼ・かまきり・・・なんて、細分化しすぎではないだろうか。これで、蔵書のバランスを考えても、果たしていい図書館になるのか、という疑問が出てくる。
話を聞いた限り、赤木氏には申し訳ないが、イラストシールを作ること、それを貼ることに目的が変わってきているように感じた。発想としてはいいのだが、イラストシールは、あくまでも補助であるべきではないだろうか。まあ、実際に導入する場合には、十進分類を生かす形でシンプルにカスタマイズしたほうがいいだろう。

「OCLCからのレポート~混沌と秩序の共存~」
OCLCの「The 2003 OCLC Environmental Scan」の解説ということで、図書館を取り巻く現状の分析と問題提起という、オーソドックスな内容だった。
「社会的」「経済的」「技術的」「研究と学習」「図書館」という5つのランドスケープからの分析は、現在の図書館の抱える問題から、求められる役割、図書館の可能性が的確に指摘され、密度の濃いものであった。
「技術的ランドスケープ」にあった「T(技術)が優勢なIT時代から、I(情報)が優勢なIT時代へ」という表現は、印象に残った。確かに、技術的にはさまざまな可能性が提示されているなかで、いかに情報をまとめるかということが、これからは求められるわけで、図書館に限った問題ではないだろう。
インターネットの爆発的普及は、「図書館よりインターネットで調べる」なんてアンケート結果が出るように、図書館の役割を揺るがしている。その一方で、情報館(インフォメーションセンター)として図書館が新たな役割を担い、新しい秩序を構築するチャンスでもある。ということで、「混沌と秩序の並存」というサブタイトルはなかなか良く出来ている。

ざっと、こんな感じか。

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